整形外専門医が教える美肌と体の意外な関係

整形外専門医が教える美肌と体の意外な関係

年齢を重ねるとともに、「肌のハリがなくなった」「乾燥しやすくなった」と感じる方も多いのではないでしょうか?

実は、こうした肌の変化は、表面的なスキンケアだけでは解決できない「身体内部の変化」が大きく関わっています。

今回は整形外科的な視点から、肌の健康を保つために必要な4つのポイントについてわかりやすく解説します。

INDEX

肌のハリには良質なタンパク質が不可欠!

コラーゲンは、皮膚の真皮層を支える「タンパク質」であり、関節や腱、骨など運動器の支持組織にも多く含まれています。40代以降はその合成能力が徐々に低下し、肌の弾力も失われがちです。

そのため、筋肉量の維持や質の高いタンパク質を意識的に摂取することが、肌のハリにもつながる重要なアプローチとなります。


肌の健康にも良い?植物性タンパク質の力

大豆に含まれる成分には、年齢とともに気になりやすい肌のしわや乾燥にアプローチする力があるとされています。

実際に、いくつかの研究では、大豆プロテインやイソフラボンを数か月間取り入れた女性たちに、肌の見た目の改善や、しわの軽減などの変化が見られました。

特に、しわの深さが目立つ人ほど効果が高かったという報告もあります。このような研究結果から、大豆プロテインは肌のハリやうるおいを保ちたい人にとって、日々の食生活に取り入れたい栄養素の一つといえるでしょう。(文献1)

適度な運動と質の高い睡眠が肌の代謝を高める鍵に!

整形外科では、運動や睡眠が体の回復にとても大切だと考えられていますが、これは肌にも当てはまります。

適度に体を動かすことで、皮膚への血流が増加し、肌の新陳代謝(ターンオーバー)を助けてくれます。

また、ぐっすり眠っている間には、肌や筋肉、骨を修復するホルモン(成長ホルモン)が分泌されます。逆に、生活リズムが乱れていたり、睡眠不足が続いたりすると、肌のエイジングが加速しやすくなります。(文献2)

糖質の過剰摂取は五十肩のリスクを高める要因に!?

肌のハリやなめらかさを保つには、必要な栄養素をしっかり摂ることに加えて、控えるべき栄養素にも目を向けることが大切です。

たとえば、糖質を摂りすぎると、体内で「終末糖化産物(AGEs)」という物質が生成されます。このAGEsは、肌のコラーゲンを変性させて、ハリや弾力を失わせ、しわやたるみの原因となるだけでなく、腱や靱帯といった結合組織にも蓄積しやすいことがわかっています。

実際に、AGEsの蓄積は、関節や筋の柔軟性を低下させる要因の一つとされており、肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)との関連も報告されています。(文献3)

糖質の多い食生活が、関節の動きや痛みのリスクにもつながる可能性があるという点は、整形外科的にも無視できません。

小麦に含まれるグルテンは腸内環境を乱す原因に!?

また、小麦に含まれるグルテンが腸内環境を乱すことで、肌荒れや炎症などの肌トラブルに関係する可能性も指摘されています。腸の状態と肌の健康は密接に関係しているため、自分の体調や肌の様子を見ながら、糖質や小麦の摂取を見直すのも良い選択です。(文献4)

まとめ

肌の健康を保つには、スキンケアなど外側からの対策だけでなく、身体の内側からのアプローチが欠かせません。

整形外科的な視点では、(1)良質なタンパク質の摂取、(2)植物性タンパク質の活用、(3)適度な運動や質の高い睡眠、(4)糖質・グルテンの摂取を控えるなどの食習慣の見直しの4つです。

このように、肌は全身の健康状態を映し出す鏡のような存在です。そのため、整形外科的な観点から身体全体を整えることが、健やかで美しい肌を保つための確かな方法と言えると考えています。

 

参考文献

  1. Messina M. Soy and Health Update: Evaluation of the Clinical and Epidemiologic Literature. Nutrients. 2016 Nov 24;8(12):754.
  2. Oyetakin-White P, Suggs A, Koo B, Matsui MS, Yarosh D, Cooper KD, Baron ED. Does poor sleep quality affect skin ageing? Clin Exp Dermatol. 2015 Jan;40(1):17-22.
  3. Millar NL, Meakins A, Struyf F, Willmore E, Campbell AL, Kirwan PD, Akbar M, Moore L, Ronquillo JC, Murrell GAC, Rodeo SA. Frozen shoulder. Nat Rev Dis Primers. 2022 Sep 8;8(1):59.
  4. de Punder K, Pruimboom L. The dietary intake of wheat and other cereal grains and their role in inflammation. Nutrients. 2013 Mar 12;5(3):771-87.

 

スポーツ/整形外科専門医
陣 彦善

有栖川整形外科 院長/福岡大学医学部を卒業後、東京女子医科大学病院整形外科に入局。大学病院および関連病院での勤務を経て、外傷処理や人工関節置換術など1000例以上の手術に携わる。東洋医学の漢方や鍼治療、さらには運動療法やサプリメント、アンチエイジングなど、保存的療法の可能性を広げるための研究と実践に尽力。2010年には運動器の統合医療をテーマに有栖川整形外科を開院し、患者一人ひとりに合わせた治療と予防を提供している。著書には「医師が教える!1分免疫エクササイズ」(世界文化社, 2020)があり、メディア掲載も家庭画報、VOGUE、Turzanなどに数多く取り上げられている。

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