植物療法とは、どういうものですか?
簡単にいうと、植物の力で人が本来持っている自然治癒力を高めるというもの。フランスでは、心身の不調に見舞われた時に、病院へ行く前にハーブ薬局を訪ね、植物療法士に相談しながらハーブやチンキを処方してもらうことが今でもポピュラーに行われています。
植物療法とはハーブティやアロマテラピーだけではなく、口から取り入れる穀物や野菜、果物も、立派な植物療法。私たちの体は日々の食事から作られる、という基本は、古今東西変わらないもの。
特にホルモンに振り回される女性は、食生活を見直し、体や心の小さな揺らぎをハーブで整えられるようになると、毎日が楽になって、生きやすさも感じられるはずです。
西洋医学については、どのように考えていますか?
私はフランスで学んだ植物療法の魅力を、より多くの人に伝えることをライフワークとしていますが、西洋医学を否定しているわけではありません。具合が悪いときは病院で診察を受けて、病気があれば治療してもらうことは絶対に必要。更年期障害がつらければ、ホルモン補充療法という選択も大いにあり。
ただ、痛みが出た時に、薬で痛みをとる対処療法で終わってしまうのは残念だな、と思います。そこに原因があるはずだから。それがわからないと、生活や習慣を見直すことができず、また繰り返してしまうかもしれないですよね。
なぜそれが起きたのか、今後日常でどんなことに気をつけるべきかをきちんと説明してくれる医師と出会えることは、人生のQOLを向上させる気がします。
有栖川整形外科の陣彦善院長とは長いお付き合いだとか
陣先生との出会いは約20年前。ドイツで行われた統合医療の研修でご一緒しました。整形外科医でありながら、ホリスティックな医療を目指したいと勉強会に参加されていた陣先生。いわば同志のような存在です。
投薬だけでなく、予防医学に基づいた考え方で、漢方や鍼、運動療法、サプリメントなどを用いて全方向から患者の体をメンテナンスしたい、そんなクリニックを作りたいと言っていて、それを有言実行されています。
15年前に開業した当時は、痛みを緩和したり血流を促すために、トリートメントルームにフィトテラピーも取り入れていたんです。整形外科ではかなり珍しいですよね。家族一同からだに痛みを感じたら、すぐ陣先生のところに駆け込んでいます。
森田さんは介護の現場にも精通しています。寝たきりにならないために、私たちが今から意識すべきことは?
植物療法は、ホルモンのアンバランスやストレスによる心身の不調、季節や環境の変化による体の揺らぎ、頭痛や肩こり、冷え性、便秘、胃腸の疲れなど、病院の検査では異常が見つからない、いわゆる不定愁訴にとても効果的です。
でも、健康寿命を伸ばすためには、マイナスを補うだけでは不十分。私がフィトテラピーで介護の現場をサポートする活動を行う中で、日本女性の49%が90歳まで生き、その大半が70代後半から寝たきりになる現実に直面しています。
誰だってそんな老後は望んでいませんよね。理想は、死ぬ直前まで、自分の足で歩け、自分の体を自分で管理できる人生です。そのために、40代以降は本気で筋肉と骨のメンテナンスを始めるべき。
特に更年期以降は筋肉量ががくんと減り、骨密度も閉経で一気に低下します。これを強化することはフィトテラピーでは無理。トレーニングと、材料となる栄養=タンパク質が不可欠です。
タンパク質が健康の中心にある?
体を動かすエネルギー源は、タンパク質、炭水化物、脂質。炭水化物と脂質は、意識しなくても日々の食事で摂れやすいものですが、特に女性はタンパク質不足になりがち。家事や育児、仕事でバタバタしている毎日に、手間暇かけて3食の栄養バランスを整えるのはなかなか難しいので、プロテインのサプリメントを利用するのは理にかなっていると思います。
最近は運動意識が高い女性も増え、プロテインのサプリを食事代わりに取る人も多いそう。プロテインは肌の弾力や髪、爪の強さにも関連しているので、毎日一定量をキープすることは、未来の健康と美容の貯金にもなります。
市販のプロテインはいろいろありますが、大豆のイソフラボンにはエストロゲンに似た作用があり、月経不順、PMS、更年期の不調を緩和したりする働きも。女性には、ホエイよりソイプロテインをおすすめしたいですね。大豆のパワーで体や心を整え、強化するソイプロテインは、ある意味、植物療法の一種といえるかもしれません。
最後に、今を生きる日本の女性たちに、メッセージを。
人生100年時代になり、人生を預けられるような信頼できるクリニックやドクターを見つけることはとても大事。けれどそれよりも重要なのは、自分で自分の体をマネージメントすること。
痛みが出て歩けなくなってから病院へ行くのではなく、日々の心身の訴えに耳を傾け、予防の意識を強くもって生活して欲しいと思います。
仕事や家庭を優先し頑張りすぎてしまう人は、植物の力を利用して気持ちを緩めながら、食事、運動、睡眠のクオリティを保ってください。