1日の歩数はどのくらい?歩数と健康の関係

1日の歩数はどのくらい?歩数と健康の関係

特別な道具もスキルも必要なく、今日から誰でも始められる健康習慣、それが「歩くこと」です。

しかし、便利さが増した現代社会では、車での移動や在宅ワークが増え、意識しないと1日にほとんど歩いていないという人も少なくありません。

「歩いていない」と感じつつも、どれくらい歩けば健康にいいのか分からない。そんな方に向けて今回は、「歩数」と「健康」の関係性について、国内外の研究をもとにわかりやすく解説していきます。

INDEX

歩数が増えると死亡リスクが低下する?

「毎日沢山歩いたほうが良い」とはよく言われますが、それがどの程度健康寿命と関連性があるのでしょうか?

2022年に医学誌『The Lancet Public Health』に発表された国際共同研究は、その問いに明確な答えを与えました。この研究は、日本や欧米など15の国際コホートを対象に、47,471人の成人(平均年齢65歳)を約7年間追跡したものです。結果、1日の歩数が多いほど全死因による死亡率が低下するという明確な非線形の関係が確認されました(文献1)。

具体的には、最も歩数が少ないグループ(中央値3553歩)と比べ、最も多いグループ(中央値10,901歩)は死亡リスクが53%も低下。この効果は年齢によって異なり、60歳未満では8000〜10,000歩、60歳以上では6000〜8000歩程度でリスク低下が頭打ちとなりました。

つまり、「1日1万歩」を目指さなくても、一定の歩数で十分な健康効果が得られる可能性があるのです。

さらに、1日の中で最も活発に歩いた30分間・60分間の速度が速い人ほど、死亡リスクがより低い傾向にありました。速さ(歩行の強度)も一定の役割を果たしているようです。

この研究は、誰でも簡単に取り入れられる「歩く」という行動が、長寿に直結する可能性を強く示唆しています。特に高齢者にとっては、「毎日6000歩を目安に歩く」だけでも健康寿命を延ばす一助になるかもしれません。

日本人における平均歩数

厚生労働省が実施した「国民健康・栄養調査」(令和元年)の結果によると、男性は平均6,793歩、女性は平均5,832歩という結果が出ており、健康維持の目安とされる1日8,000歩には届いていないのが現状です(文献2)。

さらに注目すべきは、住んでいる地域によって歩数に明確な差があるという点です。この調査報告では都市部に住む人ほど歩数が多く、地方では自動車移動が中心となる生活様式のため、歩数が少ない傾向にあることが明らかになっています(文献3)。

たとえば都市部では、通勤や通学の際に駅まで歩いたり、電車の乗り換えで構内を移動したり、エレベーターではなく階段を使うなど、日常の中で自然と歩数を稼ぐ機会が多く存在します。

一方、地方では玄関を出ればすぐに車に乗り、目的地の目の前まで移動できる生活スタイルが一般的であるため、意識しなければ1日の中でほとんど歩かないという状況になりがちです。

こうした生活環境の違いが、歩数の地域差として調査結果に表れていると考えられます。

このように、現代の日本においては、「歩く」という行動は生活の中に組み込まれているようで、実際には不足しがちです。

そのため、意識的に歩く習慣を確保することが、健康維持のための第一歩につながります。

 

健康寿命と歩行の関係を明らかにした日本発の大規模研究

2000年から群馬県中之条町において、65歳以上の高齢者約5,000人を対象に実施された日本初の大規模な疫学研究(中之条研究)では、日々の歩数や運動強度と健康との関係が20年以上にわたり追跡調査されてきました。

この研究により、1日8,000歩のうち20分間の中強度(速歩きなど)の身体活動が、さまざまな病気の予防に効果的であることが示されています。

具体的には、がん、心疾患、脳卒中、糖尿病、高血圧などの発症リスクの低下に加え、医療費の削減にも寄与することが報告されています。

中之条研究は、日常生活における適度な運動が健康維持において重要であることを科学的に裏付ける研究として、国内外から高い注目を集めています(文献4)。

 

適度な運動も健康を維持するためにはとても重要!

毎日のちょっとした「歩く」という習慣が、将来の健康を大きく左右します。
忙しい日々の中でも、無理のない範囲で一歩を踏み出すことが、健康寿命を延ばす第一歩となります。

毎日の歩数が、明日の健康につながります。過ごしやすい季節になってきましたので、今日からできることから始めてみましょう。

 

参考文献

  1. Paluch, A. E., Bajpai, S., Bassett, D. R., Carnethon, M. R., Ekelund, U., Evenson, K. R., ... & Fulton, J. E. (2022). Daily steps and all-cause mortality: a meta-analysis of 15 international cohorts. The Lancet Public Health, 7(3), e219–e228.
  2. 厚生労働省. (2020). 令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要.
  3. 松尾恵太, 井上茂, 森見建一, 他. (2014). 都市規模別にみた歩数と身体活動量の比較―平成18~22年国民健康・栄養調査データを用いて―.『日本公衆衛生雑誌』, 63(9), 531–542.
  4. 宮下政司, 他. 「高齢者における身体活動と健康との関係 ― 中之条研究より」, 健康づくり21(第2次)推進専門委員会 資料, 厚生労働省.

スポーツ/整形外科専門医
陣 彦善

有栖川整形外科 院長/福岡大学医学部を卒業後、東京女子医科大学病院整形外科に入局。大学病院および関連病院での勤務を経て、外傷処理や人工関節置換術など1000例以上の手術に携わる。東洋医学の漢方や鍼治療、さらには運動療法やサプリメント、アンチエイジングなど、保存的療法の可能性を広げるための研究と実践に尽力。2010年には運動器の統合医療をテーマに有栖川整形外科を開院し、患者一人ひとりに合わせた治療と予防を提供している。著書には「医師が教える!1分免疫エクササイズ」(世界文化社, 2020)があり、メディア掲載も家庭画報、VOGUE、Turzanなどに数多く取り上げられている。

マガジンに戻る
DOCTOR MADE/ソイプロテイン 750g

DOCTOR MADE/ソイプロテイン 750g

整形外科・美容・内科など各専門分野の異なる医師たちが協力しエビデンスに基づいて開発した完全無添加のヘルスケアプロテインです。