最新エビデンスからわかった整形外科医が勧めるプロテインの正しい飲み方

最新エビデンスからわかった整形外科医が勧めるプロテインの正しい飲み方

「プロテインは運動後30分以内に飲まないと意味がない」——そう思い込んで、タイミングを逃すたびに「今日は無駄になってしまった」と感じてはいませんか。

実は、この「ゴールデンタイム」への過度なこだわりは、最新の研究では見直されています。40代・50代にとって本当に大切なのは、タイミングより前に整えるべきことがある。整形外科医の立場から、積み重ねられたエビデンスをもとに整理します。

 

INDEX

「プロテインは運動後30分以内に飲まないと意味がない」

 

ジムやSNSで、今でもよく見かける言葉です。

しかし、この考え方は1990〜2000年代の限られた研究から広まったもので、当時の被験者の多くはアスリートでした。

そのため、40代以降の一般の方にもそのまま当てはまるとは限りません。

近年では研究が進み、「本当に大切なこと」が少しずつ明らかになってきています。


大規模研究が覆した「30分神話」

 

2013年、Brad Schoenfeldらは、23件の研究・500人以上のデータを統合したメタ解析を発表しました。

最初の解析では、「運動前後にタンパク質を摂取すると筋肥大にやや有利」という結果が示されました。

しかし、その後「1日の総タンパク質摂取量」を統一して再解析すると、摂取タイミングによる有意な差はほとんど認められなかったのです。

つまり重要なのは、運動後30分以内に飲めたかではなく、「1日にどれだけ摂れているか」、「どのように分けて摂っているか」が重要でした。

筋肉づくりや健康維持に本質的な影響を与えるのは、「毎日の総量」と「食事のバランス」だったのです。

 

「夜まとめ食い」はもったいない

 

日本人の朝食に含まれるタンパク質量は、平均で10〜15g程度と言われています。

しかし、筋肉維持に推奨されるタンパク質量は、1食あたり20〜30g程度。

  • パンとコーヒーだけ
  • おにぎりだけ
  • ヨーグルトだけ

といった朝食では、どうしても不足しやすくなります。

2014年のMamerowらの研究では、タンパク質を「朝・昼・夜」に均等に分けて摂取したグループの方が、夕食に偏って摂取したグループよりも、24時間の筋タンパク合成が高かったことが報告されています。

「夜にまとめて食べればOK」ではなく、毎食こまめに摂ることが大切なのです。


40代以降は「筋肉が反応しにくくなる」

 

年齢を重ねると、筋肉がタンパク質に反応しにくくなることが知られています。

これを「アナボリックレジスタンス」と呼びます。

若い頃と同じ食事量でも、

  • 筋肉がつきにくい
  • 疲れやすい
  • 回復しにくい

と感じる背景には、この影響が関係している可能性があります。

そのため、40代以降は「不足しないこと」がより重要になります。


1日にどれくらい必要?

 

2018年のMortonらによる大規模メタ解析では、筋肥大効果が頭打ちになる目安は「体重1kgあたり1.6g/日程度」と報告されています。

例えば体重60kgの方なら、1日約96gが目安になります。

特に、

  • 40代以降の方
  • 運動習慣のある方
  • ダイエット中の方
  • 女性
  • 高齢者

は不足しやすい傾向があります。

食事だけで十分に摂るのが難しい場合は、プロテインを朝食や間食に取り入れることも、非常に合理的な方法です。


「運動後30分」はどう考えるべき?

 

もちろん、運動後は筋肉がタンパク質を利用しやすい状態になります。そのため、運動後にタンパク質を摂取すること自体には意味があります。

ただし現在の研究では、その摂取しやすい状態は数時間〜24時間程度続く可能性が示されています。

つまり、

  • 運動後に意識して摂るのは良い習慣
  • ただし30分を過ぎたら無意味ではない
  • それよりも「毎日の総量」と「食事の分配」が優先

ということです。

「飲み忘れたから意味がない」と考える必要はありません。


おわりに

 

プロテインは、筋トレをする人だけのものではありません。

  • フレイル予防
  • 筋肉量の維持
  • 健康的な身体づくり
  • 日々のコンディション管理

など、身体の土台を支える栄養のひとつです。

タイミングばかりを気にして続かなくなるよりも、毎日の食事の中で無理なく継続することの方が、はるかに重要です。

流行やイメージだけに左右されず、積み重ねられた研究をもとに、自分に合った形でタンパク質を取り入れていきましょう。

スポーツ/整形外科専門医
陣 彦善

有栖川整形外科 院長/大学病院および関連病院での勤務を経て、外傷処理や人工関節置換術など1000例以上の手術に携わる。東洋医学の漢方や鍼治療、さらには運動療法やサプリメント、アンチエイジングなど、保存的療法の可能性を広げるための研究と実践に尽力。2010年には運動器の統合医療をテーマに有栖川整形外科を開院し、患者一人ひとりに合わせた治療と予防を提供している。著書には「医師が教える!1分免疫エクササイズ」(世界文化社, 2020)があり、メディア掲載も家庭画報、VOGUE、Turzanなどに数多く取り上げられている。

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